1927年、ガーシュイン兄弟によるミュージカルの主題歌として登場したこの曲は、一度聞けば忘れる事が出来ない他のガーシュインナンバーの例にもれず、多くの人に愛され沢山のミュージシャンにより演奏されてきた。
ベシェも晩年の1952年、パリでこの曲を録音している。もとよりミュージカルゆえ、軽快を通り越して軽薄とも思える程ひたすら能天気に明るいこの曲を、ベシェがニューヨーク時代ではなく晩年のパリで録音しているのも、偶然ではないような気がする。ベシェの作曲したものを除いて、この曲ほどパリ時代の華やかなベシェに合う曲も他にあまりないだろう。だが、その演奏自体は決して軽薄ではなく、あくまで本気だ。それは、とかく悪く言われがちなパリ時代のベシェの録音全体を通して言える事でもある。
この正月、久々に日本に一時帰国した。学生時代から遊びでジャズを一緒にやっている悪友連中とちょこっとだけ演奏した後、盛大に重慶火鍋を囲んであまりの辛さに罵声を浴びせつつ酒で喉を潤し、その勢いで迷惑を顧みずに新婚さんの家に流れ込んで皆で緑茶を頂いていたら、更に酒が進んでしまった。
年をとってしまったようで大変嫌なのだが、こういう「無駄」な時間がどれだけ贅沢なものか、というのは、昔は分からなかったような気がする。僕なら、こういう連中と「Strike up the Band」を演奏したい。