(シドニーベシェ著「Treat it gentle」、第3章「私の父」より。)
私の叔父は、歌がとてもうまかった。
あるとき、叔父は仕事の帰りがけにオペラハウスの前を通りかかった。叔父は立ち止まり、オペラを聴きながら、いきなりメインのパートを大声で歌いだした。
多くの人が彼の歌声を聴き、オペラハウスの中にまで聴こえてしまった。そして警官が来て、叔父は捕まった。
叔父は警察署で罰金を支払い一晩留置所に入れられる、とのことだった。
だが、警官も音楽好きだったのだろう。オペラのこともよく知っていた。彼は叔父にひとしきりオペラを歌わせると大いに満足し、そのまま叔父を釈放した。罰金も取らずに。
ニューオリンズとは、そんな街だった。