1944年12月末、真冬のニューヨークにてBlue Noteレーベルのためにベシェが作曲し録音したブルース。
よく晴れた夏の何もやる事がない休日の午後、眠たげに遠く青い海に白い波が一面ゆっくりとうねっていくような、そんな情景が簡単に目に浮かぶ名曲。ベシェの数々の録音の中で、間違いなく最も秀逸な作品の一つだ。
ブルースと聞いて、やたらと泥臭い旋律を思い浮かべる向きが多いかもしれないが、このような純粋に美しいブルースを聴くと、単純に心の底が落ち着き、つい聴きいってしまう。
2007年、今年はアメリカ中西部にて四苦八苦の生活をしながら、色々なことを経験してきた。面白いこともあれば、辛いこともあったけれど、そういう経験の一つ一つが、自分の感受性を高めるものでもあってくれれば、嬉しい。到底そんな高度な感受性は持ち合わせていないのかもしれないけれど。
晩秋のある夕方、職場の集まりに出るため、車で西へ向かった。慣れない職場で、先が全く見えないような毎日が続いていて、とてもそんな集まりにのこのこと出かけるような気分ではなかった。
急に、走っていく高速道路の先に、ぽっかりと大きな夕焼け空が真っ赤に広がっていた。その上を夕日に染まった雲がのんびりと流れ、なんだか風景がすべて茶色にくすんだ懐かしい映画の場面のように見えた。
そのとき僕は唐突に、もう少しここで頑張ってみよう、と思った。車の中には、「Blue Horizon」が流れていた。